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カメラ少女映(ウツス)の物語を、文、金川ろろ、小糸あきの3人で紡ぎます!
文の漫画はやっと仕上がり今回完全版を掲載!
金川と小糸は新作短編です!
それぞれのサンプルを続きから少しご紹介しますのでぜひどうぞ!
またイベント終了後は通販、委託もかんがえておりますのでよろしくお願いします!
文:漫画
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映(ウツス)とライカ ~ウツスとツクルが出会った話~ 小糸あき
「オレの名前は作(ツクル)だよ。お嬢さんは?」
男は、映(ウツス)に向かってそう言った。ウツスは小さく頷くと、男にいつものセリフを投げかかる。
「写していい?」
ツクルと名乗った男は、訝しげな顔をして、ジッとウツスを見つめた。
ツクルがOKと言ったわけでもないのに、ウツスは自分の瞳の高さにボクを持ち上げ、構える。
ボクの名前はライカM3。カメラだ。ウツスがこの世界のすべてを映し出すための道具であり、相棒だ。
「そのカメラでかい? 随分とクラシックなタイプだね。キミはほかの子みたいにスマホでカシャカシャしないのかい」
「あたしの名前はウツス。写していい?」
ウツスはツクルの質問には何ひとつ答えず、ボクでツクルを写し始めた。
「いや、もう写してるじゃないか」
ツクルは怒るでもなく、苦笑しながらゆっくりと公園のベンチに腰掛けた。
ウツスとツクルがいるのは、もう随分と古びてしまった小さな公園だ。木目が擦り切れたベンチと、ペンキのはげた滑り台。今はもうほとんどみなくなった回転式の遊具があったが、ここしばらく使われた形跡はない。ものの十分も歩けば埠頭に出ることのできる海岸沿いの近くだった。
ボクとウツスは今日、海沿いの小さな町に来ていた。登校中に、「今日は海を見たい」と、唐突に言い出したウツスが、向かっていた中学校から反転して電車に飛び乗り、今に至る。
そして海が見える通りをぶらぶらと歩いていたら、公園が見つかり、ウツスはその公園にいる野良猫をかまって遊んでいた。そこにふらりと現れたのがツクルだった。
白髪の混じった髪に、よれよれのポロシャツにズボン。典型的なさえないタイプの中年の男だった。特段写真にとって面白い相手とも思えない。
なのにウツスは構っていた猫からツクルに近づき、例のセリフ「写していい?」をツクルに向かって投げかけたのだ。ツクルはちょっと驚いた顔をしたが、すぐに微笑むとウツスに向かって名を名乗り、挨拶をしたーーんだけど。